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三国伝SS

泡沫

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※司馬兄弟のSSです。擬人化でもそのまんまでも行けるかもしれないです。司馬師の自称が吾になっています。
司馬兄弟が仲良しで公式サイトが最大手だったのである。




ズルズルと長い服を着せられ、常に兄のどちらかがそばに居てくれた。
それは蚩尤復活が出来るのが自分ぐらいしかいないというのもあるし、家族として大切に思ってくれているのだろう。
大切に……あまり世間のことを知らない自分でも過保護すぎると感じるくらいだ。
司馬炎は今年で九歳になった。兄達はすでに成人しており年齢も離れていた。
妾腹の兄弟達は父親の寵愛を受ける司馬炎をよく思っていなかった。
一族で迎えた新年にあんな子どもに何が出来るのものかと、本人の前で隠しもせずに哂った。
司馬炎の紅葉のように赤い髪が動揺する。紅玉のような瞳には涙が溜まっていた。
言い返せない悔しさで服をつかんだ。

(異母兄上たちは、ただの子どもであるボクが師兄上や昭兄上の隣にいるのが気にくわないんだ)

父、司馬懿の嫡男である司馬師に気に入られることは側腹の者にとって死活問題だ。
腹方である司馬昭、司馬炎はともかくほかの者は父が同じだということだけ。
父が亡くなれば不要だと切り捨てられるかもしれないという思惑もあるのだろう。
すでに成人している司馬昭よりも、まだ年端もいかぬ司馬炎に羨望と嫉妬の混じった感情が叩きつけられるのもまた必然だったのかもしれない。

「師兄上、昭兄上……やっぱりボクは部屋に戻って……」

鼻がツーンっとなったことで震える声で司馬炎は訴えた。この場所から早くいなくなりたいと自分さえも思っていた。
場違いだとこの歳にして気づいているのである。
だが、そう言った次の瞬間に宴会の楽しげな雰囲気と声が一気に凍りつく。

司馬師はおもむろに立ち上がると、脇に置いていた白鵬景を盃ごと床に突き刺した。
入っていた酒が床にトクトクと流れる。グイっと白鵬景を引っ張ると抜き身のまま持ち、司馬炎の腕を引っ張り会場の外へ連れ出した。
司馬師の弟である司馬昭は何食わぬ顔で酒を飲み続ける。ある意味異様な光景に父である司馬懿とその息子司馬昭だけがまゆの一つも動かさない。

「昭よ、お前は行かなくてよいのか?」
「もしも、兄上が戻ってきて炎を泣かせたものを斬り殺そうとした時に止めねばなりませんから」

司馬昭は盃を手に立ち上がる。司馬師に比べて物腰が柔らかい彼の顔が怒っていることに会場にいた誰もが気づいていた。

「さぁ、皆さんどうしたんですか?あなた方が畏れるものはいないですよ。これで満足ではないですか」

せっかく迎えられた新年です、楽しみましょうと笑顔で司馬昭は言う。誰も反論しなかった。
誰も司馬昭の翡翠色の瞳から逃げた。媚を売ることも出来ず、会話を続けることも出来ずその日の宴会は沈黙のままに終わった。




「師兄上、ごめんなさい。ボクのせいで沢山恥をかかせました」

ぽろぽろと司馬炎の大きな瞳から涙があふれる。それに対して司馬師は明らかな動揺を見せる。

「よいのだ。可愛い我が弟が侮辱されたのは許しがたい」
「で、でも、いっそのことボクと兄上達は似ていないし妾腹とも召使の子どもとも言えば」

司馬炎は赤い髪をしているが、兄である司馬師、司馬昭は白銀の髪をしていた。
それは父親である司馬懿にとても似た色合いをしている。司馬炎とは似ても似つかない姿。
だからこそ、司馬炎は余計に中傷を受けやすい。

「バカを言うなッ!吾にとって家族は父上、昭、そしてお前だけなのである。
母上が命を賭して授けてくれたお前をそのように扱えるか!」

ふと近づいた闇の気配に司馬炎は無意識に体が竦む。
兄の瞳は翡翠色から鮮血のような赤に変わっていた。怒りが、兄を変えている。
誰かを殺すことさえも躊躇しないような雰囲気に司馬炎は兄にしがみついた。

「師兄上、ダメです……兄上!」

涙でぐちゃぐちゃになった顔で司馬炎は必死に兄を止めようとしていた。
子どもの力などたかが知れている。だが、司馬炎は兄の足から離れようとしなかった。
腰のあたりに腕を回し顔を押し付ける。赤い瞳が怖い。月のあかりもなくなった部屋の中でもうっすらと笑う兄も。

「炎、闇が怖いか?」

ふと司馬師はそんなことを司馬炎に尋ねた。
意図がわからず司馬炎は司馬師を見上げる。嗚咽が光のない部屋で響く。

「いいえ、兄上達が一緒だから」
「ならば何を恐れている。吾はお前を傷つけはしない」
「確かに師兄上はボクを傷つけないです。でも、兄上は殺してしまうじゃないですか」

大切にしていたぬいぐるみも、飼っていた野良犬もみんな、兄達が。

「不要だからだ。我らに必要なのは黙示録による闇に閉ざされた世界。そこならば誰も傷つかない優しい世界が出来る」

優しく髪をなでる兄に司馬炎は恐怖で歯をカチカチと鳴らした。
母が亡くなるまでは兄はどちらかと言えば目立つ方で、機駕の未来を担う者として期待をされていた。
そうだ、母が亡くなってから父も兄も闇にとらわれてしまった。
永遠の宿命。それが何であるか、司馬炎には到底理解できなかった。

「師兄上、とても怖いのです」
「怖いことなど何一つとしてない。我らが傍にいる」

泣き疲れてしまっているのに、司馬炎は寝ることが恐ろしいと思った。
自分もやがて兄のように闇にとらわれて行くのだろう。蚩尤の声に耳を傾け続けるとはそういうことだ。
墨のように滲む闇が兄から忍び寄ってくるようで司馬炎はギュッと目をつぶる。
誰も傷つかない世界にはきっともう誰もいないのだと分かってしまったから。
兄達は死ぬまで自分を抱きしめてくれるだろう。生きたいと願う口を押さえながら、ありもしない虚妄を謳うに違いない。



End
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