スポンサー広告

スポンサーサイト

 ←bullet →霙
上記の広告は1ヶ月以上更新のないブログに表示されています。
新しい記事を書く事で広告が消せます。


もくじ  3kaku_s_L.png 雑記
もくじ  3kaku_s_L.png 三国伝SS
もくじ  3kaku_s_L.png TOXアルジュSS
  • 【bullet】へ
  • 【霙】へ
  • TB(-)|
  • CO(-) 
  • Edit

(R18)神咒神威神楽SS

冷泉⇛竜胆

 ←bullet →霙
※元のゲームが18禁のため、18歳未満の方は閲覧ご遠慮下さい。

10/25の冷竜への3つの恋のお題:覚悟は出来ている/鳴らない電話/ずっと触れたかった http://shindanmaker.com/125562  から「覚悟は出来ている」です。

追記からどうぞ。



親同士で決めた結婚。相手が真っ当な人間であれば、快く承ったのだろうがあいにく彼女は狂っていた。
鬼と呼ばれ、遠ざけられ疎んじられる。武家の頂点である竜胆紋五家の長、久雅竜胆鈴鹿。
長子でありながら女で、狂人で手がつけられないという。それはそれで、好機と考えたのは久雅の鬼姫に宛てがわれた男だけであったに違いない。
狂っていようがなんだろうが、女は女なのである。つまり、そう孕ませてしまえばいい。
直系は彼女だけしかいない。宗家と庶家という関係も覆せる。
女であり、なおかつ後見人は武家とは程遠い陰陽師。求心力の弱まった久雅を乗っ取ることはさほど難しいことではないはずだ。
そうであると、男は確信していた。絶対的な自信、自分が出来ないはずがないという自負。
中院冷泉は自信だとか、自負などが人並み以上に強い男だった。
他人など眼中にない。そもそも、他人という概念すらなかった。

「若様、母君が亡くなってお寂しいでしょう?」

物心ついたころから言われ続けたそれに、冷泉は何一つ感じるものは無かった。
母親など自分をこの世界に送り出してくれた道具でしかない。
産後の肥立ちが悪く、直ぐに亡くなったがそれがどうしたというのだろうか。
我を産むことが母親の役割だったのだ。だから、死んだ。
母親の愛情?父親に対する憧れ?馬鹿かと冷泉は嗤う。そんなもので腹が膨れるか。
必要なのは我であろうよ。自分を愛して、守って何が悪い。
中院という立場も悪くない。だが、上を見ればまだ先はあるのだ。
自分以外の者が上に立つ。それは当然のことであるのに、何故だか許せなかった。
手始めに、自分が元服してから放っておいた関係に決着をつけようと思ったのである。


「こうして我らだけで会うのは、初めてかな。冷泉殿」

春のうららかな雰囲気に似合わず、彼女の声は冷え冷えとしていた。
久雅家当主への目通りを許され、冷泉はこうして対峙をしている。
会うのは珍しいことではない。ただ、言葉を交わしたというのは記憶にない。
前代の久雅家当主が遠ざけたのも関係するだろう。
見ないで、見ないで人の形をした汚物を。自己愛が蔓延し、当たり前の世界で己が傷つくということがどうにも耐えらない。
そういう理由もあったのだろうが、前代の当主は早逝したのだった。

「言葉を交わすのは初めてでしょうな」
「私はまどろっこしいのが嫌いなのだ。貴公が遥々参ったのは、交わしたいのが言葉だけではないからだろう?」

懐から彼女は一枚の紙を出した。両者の子どもを婚姻させる血印書。
はた迷惑な紙。そんなものに人は左右されるのか。

「信じられぬから、残すのだろうな」
「信じる、ああ…鈴鹿殿はそういう御方でありましたな。我からすれば、自分以外のものを自分のように信じるなど気が触れているとしかいいようがない」

彼女は嘆息する。ああ、だとかやはりだとかそんなことを漏らす。
冷泉は理解できないが、彼女にとって世界とは歪んでおり、煩雑で耐え難いものらしい。
そして、仁義礼智信、そういった悪徳を並べて狂行に走る。東の地に住まうとされる化外とは違う、異常さなのである。

「元より……元より貴公らに理解してもらおうなどとは思わんよ、今更な」
「なぁ、鈴鹿殿。貴方はそう思うこそが自己愛だとは思わぬのかな。だとすれば、我らは言い方が違うだけで変わらぬと思いますが」
「確かに私は自分に酔っているのかもしれない。だが、これだけは言っておく。私はたとえ冷泉殿であっても信じられる」

苦しげに吐き出される言葉に、冷泉は耳を傾けた。凛とした声もいい。
蒼穹のように透き通った瞳も、宵のような髪色も魅力的だ。“初めて”認識した他人はそういう者であった。
自分の思い通りにならないものだ、これは。ならば、触りたい、近づきたい、熱を感じ取りたい。
最早、衝動としかいいようがない。なんて麗しいのだろう。
自覚すれば、そういった浮ついたものしか出てこない。綺麗だ、美しい、麗しい、愛おしい!
いや、違うと冷泉は首を振った。狂人に恋心を抱くなどどうかしている。おかしいのだ。
目の前のこれは、中院家―自分―がさらに飛躍するための定石。

「はっ、信じるとは、なるほど馬鹿げた言葉よ。一体どれだけの人間にその言葉を掛けたものか」
「冷泉殿が初めてだ。他の者などほとんど近寄って来ぬ。父にとって生き恥であった私に、好んで話しかけるものなど珍しい」

理由はどうであれ、話しかけてくれたのは嬉しいと言う。これが鬼姫。
それが心を抉る。矯飾のない言葉だけに、あながち無視はできない。
乾いた畑に水が染み込むように、言葉が吸い込まれていく。
一瞬呆気にとられたが、直ぐに平静を取り戻したかのように振る舞う。

「それで、どうなのだ。鈴鹿殿は我を夫として迎えてくれるのかな?」
「定めでは、な。だが、私は冷泉殿や周りが言うように狂人。二つ返事で頷くと思っているのだとしたら、笑えぬ冗談だな」

彼女は血印書を千切り始める。ある意味清々とした顔だった。
惹かれる。我以外の我というのが、初めて煩わしいものではないと感じた瞬間だった。

「男ならば女子ぐらい組み敷かんでも、篭絡してみせよ」
「欲しいのであれば奪い取れと、仰るとは」

面白いと冷泉は笑った。明らかな哄笑。しかし、そこに嘲りはない。
燃えるではないか、滾るではないか。分の悪い賭けほど、愉快なものはない。
賭けに勝てれば、あの輝きは飽きるまで手に入れられる。



『覚悟は出来ている』



もくじ  3kaku_s_L.png 雑記
もくじ  3kaku_s_L.png 三国伝SS
もくじ  3kaku_s_L.png TOXアルジュSS
  • 【bullet】へ
  • 【霙】へ

~ Comment ~

管理者のみ表示。 | 非公開コメント投稿可能です。

~ Trackback ~

トラックバックURL


この記事にトラックバックする(FC2ブログユーザー)

  • 【bullet】へ
  • 【霙】へ
上記広告は1ヶ月以上更新のないブログに表示されています。新しい記事を書くことで広告を消せます。